この短編集を選んだのは、「霧笛」という物語が入っているからだ。
霧笛というのは、霧が深く灯台の光が届かない日でも、海をゆく船に陸があることがわかるように鳴らす、サイレンのようなものだ。
その音が、物語のきっかけになる。
これは誰かの孤独が、誰かにとっての恐怖になってしまう話だ。
ただ、怖いのは恐怖の存在に襲われるからではない。
「その孤独な化け物がもし自分だったら」
と考えてしまうからだと、僕は思う。
やじまけんじ(コルク)
マンガ家のやじまけんじです。
元往来堂書店スタッフです。単行本「コッペくんとしんぱいいぬ」発売中です。