世界最高の聞き書き『チェルノブイリの祈り ―未来の物語』

2017年のD坂文庫の時、往来堂さんの本棚で見つけて僕の宝物になった本です。チェルノブイリ原発事故に遭遇した人々の独白を聞き書きで再現した文章ですが、読んでいると不思議にその人が遭遇した情景が目の裏に浮かんできて、その人たちがとても愛おしく感じます。アレクシエービッチさんは他人と苦悩と愛を分かち合える才能を与えられた人間なのでしょう。チェルノブイリ原発事故に彼女の視線を通すと、悲しくて凄惨な体験だけでなく、人々の持つ愛にも光が当てられていきます。特に冒頭の、放射能障害により崩壊していく消防士を看取った妻リュドミーラの、揺るぎない愛と彼女が持つ不思議な強さの物語をぜひ読んでいただきたいです。

安武 輝昭(旅するミシン店 管理人)

谷中・朝倉彫塑館並びのブックカバー店で、運営と布生地の裁断を主に担当しています。ブックカバーのサイズを増やし、少しマニアックな店を目指していく所存。次回作はハヤカワポケミス用カバーの予定です。