生まれてきたことを肯定するまなざし『デッドエンドの思い出』

「私はばかみたいで、この小説集に関しては泣かずにゲラを読むことができなかった」とあとがきに書かれているが、わたしも秋になっては読みたくなるこの小説集を泣かずに読むことができない。この小説集には、誰の身にも起こりうる不幸やきらめくような幸せの瞬間が描かれている。作品のすべてに通底するのは、わたしたちの人生を大きく包みこむまなざしだ。神とか、縁とか、運命だとか、ともするとウェットだったり大げさだったりしそうな題材を、自然に、爽やかに、ちょっとだけあたたかいような手ざわりで。わたしたちのうまれてきたことを、そのまま肯定されるような気持ちになり、なぜだかいつだって涙が止まらなくなってしまうのだ。

碇 雪恵(百万年書房/WEBmagazine温度)

ひとり出版社のお手伝いをしたり、新宿のバー「月に吠える」で店番したり、「温度」ってウェブマガジンやったり、はてなでブログ書いたりしています。