浮遊感も停滞感も伝わる「雑誌の評伝」『「アルプ」の時代』

1958年に創刊され、300号を発行した『アルプ』は、エッセイ、詩、小説、絵画などを掲載した「山の文芸誌」。串田孫一が編集の中心となり、畦地梅太郎、辻まこと、草野心平、庄野英二らが執筆し、新しい紀行文の文体をつくった。本書は終刊まで編集委員を務めた著者が、この雑誌の誕生から最後までを描き切った、いわば雑誌の評伝。創刊時特有の浮遊感や、停滞期の雰囲気など、雑誌編集に関わった者として共感するところばかりだ。終刊後、熱烈な『アルプ』ファンの山崎猛さんの手で、北海道斜里町に〈北のアルプ美術館〉がオープン。3年前に訪れて感銘を受け、すぐに本書の単行本を買った。この文庫を持って、再び同館を訪れたいものだ。

南陀楼綾繁(不忍ブックストリート代表)

昨年、往来堂で開催したトークをきっかけに、金井真紀さんと「人人本を愛でる会」を結成し、神保町〈読書人隣り〉で連続トークを開催中。第2回は11月26日(火)、ゲストは田澤耕さんです。ご参加ください、