憧れは、いつもこのひとの「贅沢貧乏」。『贅沢貧乏のお洒落帖』

文豪・森鷗外の長女で、幼い頃から舶来の贅沢な洋服や誂えのきものに親しんで育った森茉莉は、16歳で結婚後、夫とともに渡欧してたっぷりと欧州の文化を吸収した。その体験は、作家となり一人で営むアパート暮らしの中でも豊かな想像力として花開く。いわく、「贅沢貧乏」。欧州から父が取り寄せた仕立ての良い洋服や外套、マッフにスェエタア。3歳の帯解きのきものは紅白の染め分けに飛燕柄という斬新さで、これも父の見立て。パリで見かけた商売女の優美なクレェプ・ド・シィヌ(縮緬)のタイユゥル(スウツ)姿。洋服から帽子まで黒づくめだった映画監督岡本喜八の靴下に入った一筋の赤の鮮やかさーーこの本で、ぜひあなたも森茉莉体験を!

千葉 望(フリーライター)

芸能や茶道など日本の伝統文化、クラシック音楽などの「花鳥風月」が得意分野です。著書に『日本人が忘れた季節になじむ旧暦の暮らし』 (朝日新書)『古いものに恋をして。骨董屋の女主人たち』(里文出版)など。