問う人と答える人の切実さ、言葉のやさしさ『問いのない答え』

湿布を一人で上手に貼れたら寂しい/嬉しい。猫をみかけた。あえて言葉にするまでもないような気持ちやできごとがくり返し書かれる。その言葉を仲立ちに、人物が次々に登場しては主語が入れ替わっていく。みな穏やかにすごしているように見えて、世界は震災や殺人と地続きでもある。非常時に求められたのも言葉だった。ツイッターでの言葉遊びや掲示板への投稿は、だれか答えて!と祈るようになされていたのかもしれない。そんなときに人を振り向かせるのは大文字のスローガンや犯行予告より、ひそかなつぶやきだったりする。そっと暮らしてときにつぶやき、人とつながる瞬間もあれば、どうにか生きられそうと希望をくれる、やさしい本だ。

宇田 智子(市場の古本屋ウララ)

那覇で古本屋をやっているものです。去年の夏、『市場のことば、本の声』を出版して、往来堂で笈入さんとイベントをしました。そこでお話した牧志公設市場の建替が、いま目の前で進んでいます。日々、激動です。