いつ読んでも、胸がおどります。『わんぱく天国』

佐藤さとるさんが、もしかするとコロボックル・シリーズ以上に大切にしていたかもしれない作品が本書。作者が生みだす物語の魅力は、ストーリーとわかちがたく描かれる地形のディテールだと思う。読み進むうちに、いつしか自分も横須賀・安針塚の狭い坂道を駈けのぼり、小川を跳び越え、軒の間から目が眩むような青空をのぞき込む。はじめて読んでから40年以上も経つのに、いまもその身体感覚を忘れないし、一行読めばまざまざとカオルくんと肩をすり合わせて露地を駆け巡ることが出来る。佐藤さとるさんのコロボックル以外の作品がほとんど読めない今、貴重な作品です。

丹治 史彦(信陽堂編集室)

編集した永井宏さんのアンソロジー『サンライト』が発売中です。偶然ですが、永井さんも横須賀、葉山、鎌倉に縁の深い作家。どこかで目にしたら、ぜひ手に取って開いてください。