100年でも200年でもなく『おめでとう』

恋愛には潔癖なほうで、「不倫」とか「道ならぬ恋」の類にはアレルギーがある。
本書の中の一篇「冬一日」に登場する「私」と「トキタさん」も、ともに「家庭を持つ身」だから、つまりはそういう関係だ。暮れのある日、二人にたまたま訪れた「いつもと違う時間」。その一瞬一瞬、一語一語のあまりのまぶしさに、どうして彼らは「いつも、こんなふうに」いられないのか、本気でわからなくなってくる。いや、わかっているのに、わかりたくなくなる。いつもの潔癖など、どこかに消える。
短い一日が過ぎ、二人はいつものようにさり気なく別れ、それぞれの家に帰っていく。ただ一つ、トキタさんの突拍子もない、けれど誠実な「誓い」を残して。

藤田 一樹(リトルプレス『イモヅル』、フリーペーパー『シップ』発行人)

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