「森鴎外にだけは気をつけよ」(内田魯庵)『文豪たちの大喧嘩』

『文豪たちの大喧嘩』(谷沢 永一ちくま文庫/880円 + 税

「森鴎外にだけは気をつけよ」(内田魯庵)

一文字、一行でも忽せにすればたちまち公然論争の場に引きずり出される明治の文壇で繰り広げられた、鴎外、逍遥、樗牛それぞれの大激論を丁寧に解きほぐした名著である。味わいどころはなんといっても谷沢さんの微に入り細に穿つ解説描写。《孫引きの満艦飾で権威づけに努め》《面子を保つべく精一杯の見下し傲慢》なんて皮肉三昧かと思えば《応酬を何時どこで切り上げるかの作戦がなかった》など彼らの言外の思惑をも炙り出して痛快だ。今でもツイッターでは作家や批評家のレスバトルが見られるが、即時に反論できる今と違って雑誌の発行にあわせ半月、一カ月練られたやり取りはやはり見応えがある。

平山 亜佐子/挿話蒐集家

タイトルに「夫人」と名のつく小説を時代順に読んで解説する連載「夫人小説大全」がWEB本の雑誌で始まりました。実現に4年前かかった企画です。どうぞご贔屓に。