人がつくったものだから、人が守らないと。『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』

『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(門田 隆将角川文庫/840円 + 税

人がつくったものだから、人が守らないと。

晩春、福島第一原発を見学してきた。構内ではバスに乗って、事故が起きた原子炉建屋のすぐ傍まで行く。おもてで作業をしている人たちは全面マスクに防護服姿でも、バスの中では綿の手袋をはめるだけで普段着のままでいる私たち。首からさげた線量計の数値もほとんど変わらない。「つくる」のではなく「こわす」方向に向かいながらも不思議と明るさがある場所だと思った。その明るさを形成しているのは、立ち働く人たちの気概と浜通りの気候である。私がそんな感想を抱けるのも、この本にしっかりと書き留められた、真っ暗闇の焦燥の中で持ち場を守った沢山の人たちのおかげだ。

木村 衣有子/文筆業

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