彼らの弦が奏でたのは、音楽と「愛」。『弦と響』

『弦と響』(小池 昌代光文社文庫/495円 + 税

彼らの弦が奏でたのは、音楽と「愛」。

4人が耳をすませて聴き合い、ひとつの音楽を奏でる弦楽四重奏曲。その演奏を30年間続けてきた「鹿間四重奏団」が、雪の降りしきる日、日本を代表する音楽ホール「都築ホール」でラストコンサートを迎えました。メンバーやそのパートナー、元恋人、マネージャー、ホールの裏方たちもまた、それぞれの終わりの時を噛みしめます。雪にもかかわらず詰めかけた聴衆の心に最後の音楽が響き、かつての愛憎も音に溶けて流れていくのでした。演奏が困難で純度の高い弦楽四重奏は、クラシック音楽の極み。小池昌代の文章は、ひとりひとりの心理のひだを丹念に描いていきます。私も、鹿間四重奏団の弾くベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いてみたかったとつくづく思います。

千葉 望/フリーライター

本とクラシック音楽、伝統芸能を心から愛しています。旧暦の復権にも興味があり、『日本人が忘れた季節になじむ旧暦の暮らし』『お月さまのこよみ絵本』などの著書があります。