最高に面白い歴史書『ハーメルンの笛吹き男』

『ハーメルンの笛吹き男』(阿部 謹也ちくま文庫/760円 + 税

最高に面白い歴史書

ハーメルンの笛吹き男の伝説と、13世紀に100人以上の子供がハーメルンの町で実際に行方不明になったという史実とを、さまざまな形で結びあわせて、ただ単に「事実」を「解明」するのではなく(もちろんそれもやるけれど)、そのような「伝説」を生むことになった「空気」のようなものまで浮かび上がらせる。大学生のときに読んで、こんなに面白い歴史の本があるのかと思った。当時平凡社から出ていたハードカバー版は学生にはけっこういい値段で、装幀も美しく、ちょっとした宝物だったが、寮で泥棒に入られて(しかも我々寮生はすぐそこで寝ていた!)なくなってしまった。その後、古本屋でこの本を見かけるたび、これ、僕のじゃないかなあと思った。

柴田 元幸/雑誌『MONKEY』責任編集

スティーヴン・ミルハウザーの力作中篇集『木に登る王』拙訳が白水社から6月21日に出ます。ミルハウザーとオースターは毎年一冊のペースで出していきたいと思います。