他者とのつきあい方を教えてくれる一冊『サイゴンから来た妻と娘』

『サイゴンから来た妻と娘』(近藤 紘一文春文庫/500円 + 税

他者とのつきあい方を教えてくれる一冊

ベトナム戦争時、サイゴン駐在の新聞記者だった筆者が再婚したベトナム人女性と娘との暮らしを描いた随筆。私の6年半の香港暮らしの中で一番「役に立った」のはこの本でした。異なる文化の中で、時に戸惑ったり、憤ったりしても、心がねじ曲がったり、頑なになったり、考えるのを止めたりしなかった(とオモウ)のは、この本のおかげと思っています。異文化をどう理解するかということ、言語が持つ大きな意味について、近藤紘一は自分の体験を通して書きました。そしてこれは義理の娘、ミーユンの成長物語でもあり、続編の『バンコクの妻と娘』『パリへ行った妻と娘』もお勧め。そしてもし、著者のなみはずれた「愛」が気になったら『目撃者』をぜひ。

野村 麻里/フリーランスライター・編集者

5月に随筆『香港風味―懐かしの西多士(フレンチトースト)』、6月に『南方熊楠 人魚の話』が平凡社より出ました。ジャンルが違うと思われるかもですが、私の頭の中では仲良く納まっております。どちらもぜひ。